【4390】0からわかりたかったips① 〜海底ケーブル思惑編〜
ipsのビジネスって難しいですよね。
自分もとわにゃんさん、ふしちょうさんと言った有名株クラの受け売りで投資しているだけです。今回期ズレのIRが出まして、改めて精査しました。
今回は思惑の強い「海外通信事業」に絞った回となります。(多分これしか書きません。。。)
自分の結論を先に申し上げますと、当たればデカイと思いますが詳細の理解ができないので結局はわからん銘柄です。
ただ状況を鑑みて都合良いように解釈していくと夢があって、賭けても良い不確実性かと思います。
これからの内容は私見が多分に含まれます。くれぐれも投資は自己責任でお願いいたします。
海外通信事業は、今期大幅な増収増益が期待されるセグメントです。
売上2.4倍、営利1.85倍です。すごいですね!
【ビジネス内容の説明】
フィリピンで、国際回線などをCATV事業者などに提供しています。
別のセグメントであるフィリピン国内通信事業との違いは、国際通信回線を提供する事、ターゲットが大口需要家である事です。
フィリピン国内通信事業は主事業のターゲットは法人などで、ブロードバンドサービスを提供しています。また、ipsはマニラやミンダナオ島にて光回線のインフラ構築を行っており、こちらの収益は国内通信事業に入るようです。
この2つの事業、使用する商材が被る事もあって資料もごちゃ混ぜ、ネーミングも悪くてわかりにくいんですよね。海外通信=海底ケーブル国際通信って感じ。
なんで国際通信が必要かと言うと、インターネットサービスプロバイダ(ISP)にあたっては、インターネット相互接続点(IX)と言う仕組みが必要だからです。
もし気になった場合の参考URLです・・・
【絶対分かる】インターネット接続に必要なISP(プロバイダ)とは?IXとは? | ワカテク【犬でもわかるITテクノロジー用語集】
フィリピンでは国内IXが不全で、ネットに繋ぐには海外のIXを利用することが多いそうです。
【フィリピンの市場環境】
フィリピンの市場環境については成長可能性の資料でも見てもらえると、情報が古いですがある程度のレベルで簡潔に纏まっています。
成長可能性に関する 説明資料 2018年6月27日
ipsが海底ケーブルを自前で取得するまで、国際通信はPLDT 社、Globe Telecom社の2社のみが独占的に提供している状態でした。なので競争がなく割高かつ低品質と。
フィリピンの固定ブロードバンド普及率は2015年の時点で日本の1/10程度の3%ほどでした。対してCATVの世帯普及率が25%と高めです。CATV事業者は各家庭まで回線をつなげているので、その回線を利用しブロードバンドサービスを行うことができます。ブロードバンドサービスのためには国際通信が求められます。
家庭の固定ネット環境については現状は速度も普及率も料金もインフラも未熟です。
まだ固定ネット自体が普及の段階なので、戦略的に価格を落とすような事も行っています。この点はリスクでもあると考えます。国際通信の相場がわかりにくい。
【過程① 2018年9月13日 全土でのサービスが可能に】
ipsは2018年9月13日に以下のIRを発表しています。
”当社グループ、フィリピン全土での通信事業の展開が可能に フィリピン国家通信委員会が、InfiniVAN,Inc.の事業地域の拡大を承認”
元々は、ルソン島だけの免許でした。また、ipsは国際回線を用意するだけで、PT&T社の回線を利用する事でCATV事業者へ提供していました。
そのため上場からの2年間にわたり、PT&T社のインフラ(国内回線)の範囲に収まる17社と、顧客が自前でマニラと回線を結んだ3社の計20社のみの取り引きでした。
このIRは、全土でのサービス開始+自社での国内回線調達開始と言った内容のIRです。大手通信事業者1社より、大口の国際回線と国内回線の提供を受け、それを小口に分けてCATV事業者に転貸する。言うならば代理店みたいな立ち位置です。
ipsはインターネット接続サービスを視聴世帯に提供できるCATV 事業者は、およそ250 事業者あるとしています。
このIR後、取引会社数が若干伸びていきます。
参考 2019年3月期 第2四半期 決算説明会資料 (2018年11月21日)
【過程② 契約事業者数増加】
以下 2019年3⽉期 第3四半期 決算説明補⾜資料 2019年2月8日における情報です。
2017年12⽉末→2018年12月末⽐で、提供帯域量は増加 61.5G⇒100.7G(63%増)とのこと。需要は伸びていますね。
マニラ地区では上記の通り帯域量が増えたものの、2015年から開始した3年間契約の高単価の長期使用権リース(IRU)が満了し、競合を防ぐために戦略的に料金大幅値下げで低単価の短期リースが増えました。この後は一旦減収、利益は横ばいとなっていきます。
下記の通り、19年3月期3Q時点で契約事業者が増えました。
次に、19年3月期4Q時点です。3Q時点では4Q中に4社増の見込みがありましたが、実際は増えませんでした。(この後は契約事業者数の発表はありませんので、現在まで変わっていないかも知れません。)
この時の原因を「地方のCATV事業者への取引拡大を図ったが、通信機器などの新規設置が必要で、納品に時間がかかり仕掛案件増加している。 今後は、地方でも自社回線を引いて、案件獲得を目指す。」としています。
そこではじまるのがミンダナオ島の回線敷設です。
引用元 2019年3月期 第2四半期 決算説明補足資料 2018年11月9日
【過程③ ミンダナオ島開拓 パナイ島開拓】
ミンダナオ島での回線敷設が2019年4月より始まりました。
2019年末時点で700キロメートル超完了。
この工事も遅れに遅れます。コロナにより中断などもあるようで、まだ完了していません。
沿線にあるCATV事業者は130社で、工事が完了すれば新しくこの事業者にサービスを提供できるようになるわけです。
ips側は素材を提供し、工事はCATV事業者が行う形になっています。
敷設工事に参加する事業者12、新規で注文した事業者は15社となっています。
引用元 2020年3月期第1四半期 決算説明補足資料 2019年8月9日
また、パナイ島での回線敷設工事も始まっていきます
おそらく続報はありません。
引用元 2020年3月期 第2四半期 決算説明会資料 2019年11月11日
【海底ケーブル取得】
2020 年5月7日 「固定資産の取得(国際海底ケーブルの使用権の取得)及び 当該使用権の一部提供に伴う収益計上に関するお知らせ」が公表されました。
これはフィリピンー香港間、フィリピンーシンガポール間を結ぶ海底ケーブルで、15年のIRU契約(長期使用権)となっています。
21年3月期1Qの決算にて、通信回線使用権仮勘定が28億4600万円計上されています。
これにより何が変わるかと言うと、今までは仕入れた範囲で売っていたものが、海底ケーブルに投資することで通信容量を作り出すことができると言うことです。
フィリピンのインターネット需要はスマホ含めてとても急成長しています。
ipsはローカル5Gに使われる周波数帯を獲得していて、今後は各家庭まで回線を引くのではなく、5G通信基地局を設置していく構想があります。ラストワンマイルに無線を使う事で、素早くインフラを普及させることができ、またモバイル事業者とインフラをシェアすることができるようになります。
2020 年3月 26 日 新型コロナウイルス感染症による影響等に関するお知らせ(第2報)では、「一日の平均で 56%増、ピーク時のトラフィックで 15%増であり、今月は過去 最大のトラフィックボリュームとなっている」としています。
こう言った需要増に対して対応できると共に、新規顧客の獲得に向かう状況が整ったのではないでしょうか。
下の画像は2020年6月29日公表 2020年期通期の有価証券報告書からの抜粋です。
今までの国際通信回線は回線あたり10Gbpsレベルであったことが見えます。10Gbpsというとauひかりのカタログスペックレベルですね・・・。
個人的な考えですが、2020年取得の海底ケーブル開通前までは、通信量の限られた回線を使っての限度のあるビジネスであったのではないか?と思います。そうでなければ海底ケーブルの使用権を取得したところでいきなり売上143%増とはならないはずです。
2020年6月30日の株主通信「第29期 決算報告書」では、海底ケーブルの取得理由にあたって以下のように書いています。
伝送技術の発達により、すでに1ペア(2芯)の光ファイバーだけで、現在の他社が取り扱っている需要 をすべて賄える程度までの通信容量の生成が可能であり、今後も技術革新で、1ペアごとの通信容量は 増大することが予想されております。このような環境で新設すると、多くの光ファイバーを取得することに なり、供給能力が大きくなりすぎるので、今回のように既設の海底ケーブルを取得したほうが効率がよいといえます。
【海底ケーブル投資回収スキーマ】
ipsは、大口需要家に対するIRU条件での通信回線のリースにてこの28億4600万を回収する目論見でいます。
「これを機会に、CATV 事業者向けの通信容量のサイズアップを図ることで、CATV が提供する ブロードバンドサービスの品質の向上・競争力アップを図る」とのこと。
2020年6月30日の株主通信「第29期 決算報告書」では、海底ケーブルの取得にあたって以下のように書いています。
「今回、この回線に関連する通信事業者からの同意を得て、また大口の需要家に対して大口で提供すること で、投資を早期に回収できるスキームができましたので、この回線を取得することといたしました。」
逆に早期回収できないとipsの今後が危ういかも知れません。
2022年末にはソフトバンク主導の同じルートを繋ぐ海底ケーブルが完成予定です。
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200611_01/
ニュースの順番ではこちらの方が遅いので少し不安があります。
供給増での単価減は免れないと思います。これからの2年超でどこまで契約が伸ばせるかが勝負といったところですね。
上記ニュースに関しては概ね問題ない想定との回答をいただいたので打ち消し選させていただきます。
供給増がなくとも、そもそもITの世界は日進月歩で年々通信量に対する単価は下がるはずで、今が一番高く売れるはずです。
【21年3月期2Qの下方修正】
今回2Qの下方修正、通期予想の据え置きが発表されました。
これから逆算すると、1Q業績(売上)1813(営利)325→2Q業績(売上)1587(営利)255となり、結構2Q業績が落ち込んでいます。
通期予想が8900,1700で、今回発表された2Q累計が3400,580です。2Q累計を2でかければ6800,1160なので、このペースで考えると未達分が2100,540です。ただし、2Q悪かったのでもう少し下目に見るべきですね。
それに対し、今回の2Q下方修正分が1750,570になります。営利はマシですね。
ここで重要なのが、IRに問い合わせたところ、今まで通期の業績予想に乗っていたのはIRU(長期使用権)での契約が確定した1社に対する売上のみとのことです。
今回の下方分の大部分は海底ケーブルのIRU売上計上の期ズレになるはずです。明細ないので他セグメントの下方分を考慮する必要がありますが、たった1件で売上15億、営利5億くらいの規模感のある案件であったと考えます。使用権を取得した28億という金額に対し、たった1件でこのインパクトは凄いと思います。
IR曰く、この1案件は6年間で売上計上、初年度に大きく計上し残額は按分、別途メンテナンス料との事。また引き合いは好調で、比較的短期間で回収が出来そうとの回答でした。
大口案件のIRU(長期使用権)については一括から分割まで様々なケースが想定され、小口案件に関しては1〜2年の短期リースとなるとのこと。確定案件についてはまだ1件のみとのことです。
【ビッグチェンジなポイント】
|
売上 |
営利 |
営利率 |
案件数 |
単価 |
2017/03 |
1,147 |
370 |
32.3% |
20 |
57.4 |
2018/03 |
1,596 |
460 |
28.8% |
20 |
79.8 |
2019/03 |
1,603 |
490 |
30.6% |
20→24 |
66.8 |
2020/03 |
1,271 |
479 |
37.7% |
24(おそらく) |
53.0 |
今までの売上は全案件で年15億程度で、案件数に対する平均の単価にすると年50~80百万円程度になります。 海外通信事業セグメントのここ数年の業績をまとめました。
今回の案件は、1案件で年15億程度の売上、来年からの5年間は例えば1/5程度とすると、2~3億の案件と想定しています。
ブレはありますが売上15億の営利5億の想定ですと営利率33%で、今までとあまり変わらないので辻褄も合うと。
他にも同規模の案件が眠っているとは限りませんが、ドリームを感じますね。
【雑感と個人的な意見】
フィリピンの外資参入における障壁についてや、公益を伴う通信事業に関する免許についてなど、一部内容はかなり端折りました。カントリーリスクが余計に存在することは確かで、子会社infiniVANの上場期限が近い事も気にはなります。
また、IXについても自分はよく分かっていないので、フィリピンが国内IXへの投資をはじめれば本セグメントの単価は大幅に下がるのではと言った疑問もあります。
もちろんミンダナオ島の回線敷設をはじめとして、計画通りに行きにくい環境であると思います。比較的最近までミンダナオは治安が悪かったですし、ips自体、新しいチャレンジの連続だと思います。あの楽天だってインフラ構築に関してはグダグダですしね。
上場来のチャート(週足)
PER(会社予想)株価
今まで色んな予定の延期を何度も繰り返しています。海底ケーブルも当初は7月からの売上予定でした。個人的な意見ですが、遅れていることで、今の株価は投資家からの期待があまり乗っていない値ごろ感かと思います。
PERベースで見ると高い位置ではありませんし、海底ケーブル発表以降の出来高もそこまで際立って多くなく見えます。海底ケーブル取得とか言われても、深掘りしないとよくわかりませんしね。
内容がわかりにくい上にセグメントも多いので、数字がついて来ないうちはなかなか割高な評価にはなりにくいかなと。そのため上方修正で数字が来れば株価上昇が期待できると考えています。
IRU早期回収の意味合いもあまり広くは理解されていないと思いますので、実現すればそれだけで今の株価よりは上げると思っています。実情は早期回収できなかったらリスクの高いような投資ですからね。みずほ銀行は6年間の期限で15億円を貸し付けています。この点も個人的には銀行のお墨付きと捉えています。
また、海底ケーブル使用権取得の28億は15年ペースで按分すると思いますので、この点も決算の見栄え(営利率)に関しては当面良いように見えると思います。
海底ケーブルに関しては未使用分が按分され、IRUが決まった分に関しては設定時に計上されるとのことです。(要は売却と同じ扱い)
今後の売上に関してもIRU契約が多ければ、一時的に大きな数字が上がります。この点も見た目が良い数字になりやすいですが、IRの表現次第ではきちんと折り込んでくるかも知れませんし、ある程度は市場にバレているかも知れません。
【戦略とまとめ】
営利率33%で計算すると、純利益ベースで2846百万円回収するには123億の売上が必要となります。改めて考えたらC2Cの取得金額は原価計上するからこんなに必要ないです。我ながらめちゃ頭悪い。。IRUは顧客ごとに様々な売上タイミングになると思いますが、向こう2.3年のうちにこの程度の売上見込みが立つことを期待しています。去年までのipsの売上規模65億から比べたら、かなりのパーセンテージで押し上げてくれるかと。
個人的には今期中の上方修正を期待しています。もしも上方修正を受け株価が上昇した場合には目論見通りという事で、ある程度は処分しつつと言った予定です。
最終的には来期の通期業績予想の出る本決算で判断したいと思います。